十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

彼岸花

夕刻の畦道で、彼岸花が咲いている。
仕事帰りの電車の窓から見える彼岸花は、そこだけ紅蓮の炎のようであった。


帰っても、誰もいない。
空気の澱んだ部屋に帰るのは、気が重かった。
ほんの少し炊いたコメを、コンビニで買ってきた惣菜で食べた。


金曜日に職場を出ると、翌週の月曜日まで誰とも喋らないこともめずらしくなかった。
アパートは日系ブラジル人ばかりだったので、飛び交っているのはポルトガル語だけだ。


もらったテレビはアンテナが悪かったのか映らなかったので、ラジオをつけてひたすら孤独地獄を凌いだ。
孤独とは怖ろしいもので、限りなく思考が負の方向に引っ張られる。


やがて、家庭裁判所に提出していた離婚調停申立書を取り下げたのだが、その代償はあまりにも大きかった。
彼岸花を見ていると、当時の事を思い出して、今でも息が苦しくなる。


真実とは、生と死のあわいにあるのかもしれない。


ヒガンバナ