十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

小さな椅子

雨が降らない限り、そのお婆さんは庭の隅で小さな椅子に座り道ゆく人を見ていた。
日に焼けたその顔には、深い皺が刻まれていた。


じっと動かないその姿は、景色の中に溶け込んで、気づかない人もいるほどだった。


いったい何を考えながら坐っていたのだろう。
過ぎ去った日々の思い出に浸っていたのだろうか。


その姿には、過去に対する後悔も、将来に対する不安も感じられなかった。
まるで、小さな修行僧の置き物のようであった。


気がつけば、いつの間にか、お婆さんの姿を見かけることがなくなった。
風が靄を吹き消すように、視界から消えてしまった。


幼稚園で子どもたちが座るような小さな椅子は、今どこにあるのだろう。