十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

残炎

厳しい暑さがつづいている。
今日も猛暑日になりそうだ。


この残暑を閉じ込めて、真冬の暖房に使いたいくらいである。


夏は暑い暑いとふうふう言い、冬は寒い寒いを連発する。
では、春のような陽光に輝き、見るもの聞くもの善美を尽くしていれば、人間は満足するのだろうか。


菊池寛の「極楽」という短編がある。


文化2年、京の染物屋の老母おかんは安らかに大往生を遂げる。
来世の極楽浄土で、夫の宗兵衛に会えることを露ほども疑っていなかった。


そして、阿弥陀如来に導かれ、蓮の台に坐っている宗兵衛と再会する。
ところが、宗兵衛は嬉しそうな顔をしなかった。


なにひとつ悲しみも苦しみもない歳月が、何十年とつづく。


「何時まで、坐って居るのじゃろ。何時が来たら、変わった処へ行けるのじゃろ」
「何時までも、何時までもじゃ」
そして、二人は欠伸ばかりしていた。


ふと、おかんは、「地獄はどんな処かしらん」と言う。
その時、宗兵衛の顔に華やかな好奇心が表れる。


もはや死もなく苦しみも悲しみもない世界は、時間という概念があると、かえって退屈するのかもしれない。


災害は困るが、気候も変化があったほうがいいようだ。
なんとも、人間は我が儘な生き物である。


コバギボウシ