十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

ネジバナの思い出

閉鎖病棟に入院したことがある。
窓は片腕を出せる程度しか開かず、病棟の中は諦念と従順が入り混じった空気が澱ん
でいた。


私は外出を許可されていたので、午後になるとナースセンターに届けを出して病棟を
抜け出した。
病院の裏庭のプランターにネジバナが咲いていた。


「これは、ネジバナって言うのよ。ほら、ねじれて咲いているでしょ」
と、横にいたNさんが言った。
私は花の名を知っていたが、「うん、可愛い花だね」と言った。


あれから数十年の歳月が流れた。
お互い退院したが、外来でその後Nさんの姿を見ることはなかった。
私も転院し、その病院には行くこともなくなった。


当時、Nさんには小さなお子さんが二人いた。
今では、孫に囲まれて生活しているかもしれない。


ネジバナが咲いていたから、6月下旬~7月ころのことだったのだろう。
今は、Nさんが穏やかに暮らしていることを願うばかりである。


ネジバナ