十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

おもてなし

どこの国の何という部族かは忘れた。


旅人が寂しい草原を歩いていたら、日が暮れてしまった。
そこで、遊牧民のテントに寄って、一晩泊めてくださいとお願いする。


遊牧民は、どうぞ、どうぞと、よろこんで客を迎え入れる。
みんな車座になって食事をし、酒を飲み、旅人はお礼に諸国の面白い話をして聞かせる。


いざ、寝る段になると、主人は「どうぞ、これを召し上がってください」と言って、妻を差し出す。
旅人は、その妻と一夜を共にするわけだが、もし妻が妊娠でもすれば一族は大喜びだ。


部族間の婚姻がつづくと、どうしても近親交配になってしまう。
そのため、遠くから来た旅人の血を入れ、部族の血を更新するのである。


男性諸氏よ、ここで鼻の下を伸ばして喜んではいけない。
一夜を共にする妻なる女性は、一生風呂に入ったことのない極めつきであることを忘れてはならない。


それに、差し出された女性を断るということは、大変失礼なことなのである。
たとえその妻が、オニババアのようであっても断ってはいけない。



東京オリンピック・パラリンピックを誘致するとき、「おもてなし」という言葉がプレゼンで遣われ、あたかもそれが日本人の美徳のように持てはやされている。
しかし、おもてなしを自分の価値基準だけで判断していないだろうか。


外国人なら、その国の文化や慣習を熟知していないと、独りよがりのおもてなしになってしまうであろう。
自分が考えるおもてなしと、相手が欲するおもてなしは、自ずから違うはずである。


キチジョウソウ(吉祥草)