十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

紅差し指

夜半から降りだした雨が
色づいた銀杏の葉を濡らし
淡いかなしみを帯びて地面に吸い込まれていった


「これからは、ひと雨ごとに寒くなるわね」
不意に後ろから声をかけられた


振り向くと蕗谷虹児の画に出てくるような女性が
儚い陽炎のように佇んでいた


その白い横顔を見ると
長い睫毛のあいだから
今にも涙の雫がこぼれそうだった


そして 頬に添え当てた紅差し指の先に
わずかに残ったべに色の艶めかしさ


思わず手を伸ばせば
その姿は
すっと掻き消すように見えなくなり


夕化粧の花に似た甘い香りが
かすかに残った


ペンタス