十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

嫁菜?野紺菊?

この花を見ていると、伊藤左千夫の「野菊の墓」を思い出す。
旧い因習に縛られて、民子と政夫は結ばれることが出来なかった。


「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き・・・・・・」
「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」
「民さんはそんなに野菊が好き・・・・・・道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」


読んでいて、なんと純真なのだろうと思ってしまう。
そして、二人の結末を知っているだけに、せつなくなるのである。


民子の墓の周りに咲いていた野菊は、関東嫁菜だという説がある。
勿論、この場合花の同定が問題なのではないが。


伊藤左千夫は歌人でもある。


太宰治は、玉川上水に入水する直前、友人の伊馬春部に宛て伊藤左千夫の歌を色紙に書いて遺した。


「池水は濁りににごり藤波の影もうつらず雨降りしきる」 伊藤左千夫


草むらで咲く薄紫の花を見ていると、民子の死と太宰の死が絡み合って、ひどく複雑な気持ちになる。


ヨメナ?ノコンギク?