十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

女性専用車両

退職した時にホッとしたことのひとつが、満員電車に乗らなくてすむようになったことである。
立って本も読めないほどのすし詰め電車は、ほんとうに疲れる。


疲れるのは仕方ないとして、私が恐れたのは痴漢と間違われることであった。
だから、朝の通勤電車でも、できるだけ女性のいない場所を選んだ。


「あたしなら、ひじ鉄食らわして、痴漢だーって叫ぶよ。そうすれば、周りの人が捕まえてくれる」
夕方の乗換駅のホームで、女子高生が数人で話していた。


話の内容からして、目星をつけた男性を痴漢に仕立て上げる相談のようだった。
警察も男の話より口裏合わせをした女子高生たちの話を信じるであろう。
こうして、憐れな男は痴漢の犯人にされてしまうのだ。


たまたま、この女子高生たちの話を耳にしてしまった私は、背筋が寒くなる思いをした。


あの時の女子高生たちは、もう30代後半になっているはずだ。
結婚して家庭を持っている人もいるだろう。
面白半分でやった行為によって、人生をくるわされてしまった人がいないか心配である。


ところで、女性専用車両というのがある。
私も一度だけ間違って中に入ってしまい、慌てて降りたことがある。
数歩だけ足を踏み入れた車両には、男にはわからない独特の雰囲気があった。


まあ、世の中には本物の痴漢男や、スカートの中を盗撮するバカがいるからな、女性専用車両があるのも仕方がないか。
と思うと同時に、どうも釈然としない何かが残る。


女性専用車両のことを考えると、終戦後にあった米軍専用車両のことを思い出す。
正確には、連合軍専用列車といって、駅の出入り口も別だった。
おもに、米兵とその家族、米兵を相手に身体で商売をする女などが乗っていた。


ぎゅうぎゅう詰めの車両の中で、日本人は敗戦の屈辱と悲哀を味わったのである。


シュウメイギク