十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

蝋石と女の子

私は夢を見たのかもしれない。


秋の柔らかな陽だまりに、ちいさな女の子がしゃがんでいた。
よく見ると、手に蝋石を持ち、地面に何か描いている。


「何を描いてるの?」
「うん、お花。いっぱい、いっぱい描くの」
女の子は、顔を上げずに答えた。


女の子の蝋石は、もうほとんどなくなりかけていた。
「蝋石が随分ちいさくなっちゃったねえ」
「だいじょうぶ、あたし、いっぱいお花を描くの」


女の子の膝小僧を照らしていた光が急に暗くなった。
私は空を見上げた。
流れた雲が太陽の光を遮っていた。


「ほら、お日さまが隠れちゃったよ。寒くない?」
「・・・・・・」


私が空から目を戻すと、女の子の姿はなかった。
まさに、忽然と消えてしまった。


一陣の風がヒューと吹き、女の子の描いた花びらが空に舞った。
ピンク、黄色、紫、水色、いろんな色の花びらが、万華鏡を回したように乱舞している。


蝋石で描いた花びらは、舞えば舞うほど鮮やかな色に変化しているようだった。


ふと気がつくと、私の足許には、女の子の持っていたちいさな蝋石が残されていた。
私は、そのちいさなかけらをポケットに仕舞った。


チロリアンランプ