十六夜の厭世的雑録

人生をそんな深刻に考えるな・・・永久に続くものじゃないんだから。

ウサギ

「ウサギって淋しいと死んじゃうってのはほんとかなあ」
南木佳士の短編小説「ウサギ」は、この言葉で始まる。


子どもたちが小さかった頃、ウサギを飼ったことがある。
ダッチという種類で、白黒模様がパンダのようであった。
オスかメスか判らなかったが、ポン太と名づけた。


空き地から採ってきた草や、ラビットフードを食べさせていた。
とくにタンポポが好きで、夢中になって食べる姿が可愛かった。


庭に出して遊ばせていた時、猫に追われて、まさに脱兎の如く物置の下に隠れたこともあった。
ある時は、近所の人が家庭菜園に植えていたナスの苗を全部齧ってしまったこともある。


その家の人は、まだ引っ越して来る前で、休みの日にやってきては庭の隅に野菜を植えて楽しんでいた。
急いでナスの苗を買って植え替え、顔を合わせた時に丁寧に謝ったことを思い出す。


ポン太は10年くらい生きて、ある寒い日の朝、小屋の隅で硬くなっていた。
ウサギの寿命は10年前後らしいので、天寿は全うしたと考えるべきなのかもしれない。


しかし、一生を狭い小屋の中で過ごし、子孫も残さず、ポン太は幸せだったのだろうかと、ふと考えることがある。


オカメインコのリコちゃんと、仔猫のまま死んだニャン太が眠っている庭の隅に、穴を掘ってポン太をそっと埋めた。


それ以降、生き物は飼っていない。


トレニア